藤原 昭広 氏

プレジデント社 社長  2007.01.13

『日本の これまでの10年、これからの10年』

記念すべき第1回は、株式会社プレジデント社代表取締役社長で、TBS「ブロードキャスター」などのコメンテーターとしても有名な藤原昭広氏に講師をつとめていただきます。藤原氏は、雑誌『プレジデント』編集長時代に購読部数を大幅に増部させ、現在はプレジデント社の社長として『プレジデント ファミリー』を創刊し大ヒットを飛ばすなど、雑誌の企画・編集・販売を通して時代を読み取る名手でもあります。
 当日は、IT革命などによって過去に例がないほどのスピードで変化をもたらしたこれまでの10年を検証し、さらにダイナミックに変貌するであろうこれからの10年を占っていただこうと思います。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

<紹介略歴>
1958年10月、岐阜県恵那市生まれ。
1983年3月、早稲田大学第一文学部卒業。
同年4月、株式会社プレジデント社入社、販売本部配属。
その後、プレジデント編集部副編集長を経て、1995年4月広告部長。
広告本部長を経て1999年10月、プレジデント誌月2回刊リニューアルに当たり、編集長に就任。2003年3月、常務取締役就任、編集統括兼務。編集長業務の傍ら、NHK、TBS、テレビ東京等のテレビコメンテーターも勤める。講演も多数。2005年3月、代表取締役社長就任。(2005.3/10現在)





講演レポート
参加者 140名
日本のこれまでの10年、これからの10年
株式会社プレジデント社
代表取締役社長 藤原 昭広 氏 
「ねっと99夢フォーラム」の記念すべき第1回の講師は、TBS「ブロードキャスター」などで、愉しくも的を射たコメントで定評のある株式会社プレジデント社代表取締役社長の藤原昭広氏につとめていただいた。藤原氏の約80分の講演は、自らのマネジメントなどを披露した中身の濃いもので、会場の参加者140名は大いに納得した様子だった。
「49:51」同条件でも業績に差が…
 藤原氏は開口一番、「立っている人座ってください、前が空いていますよ。さあどうぞ」と言って、参加者への心配りを忘れない。
 また、「昨年末、町おこしの講演会の講師を頼まれ、参加者は30~40人ぐらいだろうと想像していたところ140人と聞き、とても熱い会だなーと思いました。」と、主催者にもリップサービスをしてくれる。
 藤原氏は、プレジデント社のプレジデント(社長)としての最大の問題意識を、「情報」と定義づける。年末に取引先を訪ねた際、昔であれば新聞紙大の資料を引っ張り出して、業界動向やその会社の業績、現地の様子などを克明に調べて臨んでいたが、それがインターネットによって簡単に情報を得られるようになったと、ITの威力について言及する。
 そして、その「情報」を得ることに関しては、みなが等しく同じ条件にあるにもかかわらず、幸福な人、不幸な人、黒字の会社、赤字の会社があることに疑問を投げかける。
 それを藤原氏は「49:51の法則」で説明。49の赤字会社も51の黒字会社も、そう違いはなくて、その差2で業績が決するのだという。
目的の再定義で変革を促す
 藤原氏は、プレジデント社の看板雑誌『プレジデント』が月刊誌から月2回刊になるとき、広告本部長から請われて編集長となった。その際、「5年後、10年後の松下幸之助、本田宗一郎を輩出する雑誌にする」という目的を再定義した。
 そして、活字離れが進む中、「売れる雑誌に変革する」使命も背負っていた。そこで、藤原氏は、誌面刷新で目的を明確化した上で、20名のスタッフに対して「現状で月2回刊をめざそう」とハッパをかけた。
 一見、無謀とも思える改革であったが、それまで15日間を企画と取材、残りの15日間をフィニッシュワークに充てていたのを、フィニッシュワークを2~3日にして、企画・取材は2~3日しか減らさないで取り組もうと方針を明示した。当然のことながら現場の反発が待ち受けていたが、一人ひとりとねばり強く話をして、説得していったようである。
 フィニッシュワークの減少で品質の低下も懸念されたが、3回の校正を1回にすることで集中力がつき、ケアレスミスも減少した。
 目的の明確化、再定義が、月2回刊への移行、誌面刷新を可能としたのであろう。
過去の常識にとらわれる五合目人間
 さらに、『プレジデント』は、藤原氏が社長となり、発行部数が前年比128%に伸びた。それまで『プレジデント』は経済誌として、年間購読や書店売りが中心だった。経済誌は、若者が集うコンビニエンスストアにはふさわしくないのではといった固定概念があったようだ。それを、コンビニに顔を出すのは若者ばかりではないからと、コンビニでの販売を決断し、仕組みを考案したのである。
 また、コンビニでの販売がよい意味での宣伝となり、書店1店あたりの販売部数も増えたそうだ。藤原氏の「新しい未来を拓くためには、過去の常識は邪魔」の言葉には、ばバックボーンがあるだけに説得力がある。
 会社組織の中で、「過去の常識」にとらわれている階層は「五合目人間」と位置づける。経営トップは「業績がよい、楽勝だ」と思ったら会社が傾くので、常に危機意識をもっているものだ。メーカー等の営業現場も、がんばっても売れない、販売減少となったら、これは、おかしいとピンとくる。その点、中間管理職はとても重要な階層であるにもかかわらず、過去の常識にとらわれ、大事な情報を逃しているという。
元気人間が環境を元気にする
 最後に理科の実験の話をしてくれた。100匹のカマスを海から捕ってきて、それを大きな水槽の中に入れて餌をあげると、餌に寄ってくる。次に水槽の真ん中に透明のアクリル板を置き、カマスがいないほうへ餌を入れる。カマスは最初、餌をめざして透明のアクリル板にバカンバカンと当たり餌を取りに行こうとする。そのうち透明のアクリル板を外しても、あきらめて無気力カマスになる。
 この無気力カマス群を一瞬にして元気にさせるには、海から元気なカマスを捕ってきて、無気力カマスの水槽の中に入れる。水槽に餌をやると、元気カマスは餌を食べる。それを見て、100匹の無気力カマスは元気カマスに続いて餌を食べに行き、元気カマスとして蘇るのだそうである。これは人間界にも当てはまるとのこと。
 藤原氏は「この『ねっと99夢フォーラム』から多数の元気カマスが出ることを祈っています。」と結んだ。
ご意見  【講師・参加者】
講師のコメント
 今日は、九十九地区、大網白里町の皆さんにいっぱい元気をもらいました。こんなに元気な集まりは、これまで初めてです。1人ひとりの元気な集まりが町を元気にします。実は、町が小さい大きいは関係ないんですね。どんな大きな改革でも小さな改革から始まります。1人の志が世の中を変えるということがあるのです。この「ネット99夢フォーラム」の活動に共鳴します。期待大ですね。  (ケーブルネット296の斉藤絵美氏の質問に答えて)
ジャーナリスト 岡村繁雄氏
コロンブスの卵だ!
 なるほど、雑誌「プレジデント」が月刊から月二回発行になった秘密はそこだったのか。過去の常識と柵(しがらみ)を破ること。それまで当たり前だった校正の回数を減らし、印刷・造本コストを見直す。当時、編集長。いまは同社社長の藤原さんがやったことは、まさにコロンブスの卵なのだ。そう、誰が最初に手を付けるか……。だが、それが難しい。編集長就任と同時に、そこにメスを入れたという藤原さんの実体験には説得力があった。出版不況が言われる中、コンビニというチャネルにビジネス誌を置いて、部数を伸ばすいう戦略も、誰が考えるかではなく、誰が試みるかだったのである。
 ネット99夢フォーラムの四人も同じ。大網の町おこしを考えている人は少なくないかもしれない。要は一歩を踏み出す情熱があるかないか。彼らはそれを短期間で行った。鉄は熱いうちに打て。だからこそ当日、一三〇人を超える町民が集まったのだと思う。
広域高速ネット296放送(記者)斉藤絵美氏
第一回のねっと99夢フォーラムについて感じたことは「素晴らしく面白く、質の高い講演。」そして、「講師との距離が近い」ということ。同じフロアに、隔てるものは何もなく、生の声が聞こえる距離に講師がいる。(想像して伺ったが、本当に近くに感じた。)
第1回の藤原昭広氏は「これまでの10年、これからの10年」をテーマにした講演。雑誌『プレジデント』の発行部数を大幅に増やした自身の経験や、これまで見てきた企業とそのトップの姿から、伸びる会社とそうでない会社との違いなどを話した。これがとてもわかりやすく、ユーモアたっぷりで、取材を忘れて聞き入ってしまった。思わず笑ってしまった部分もあったが、そこは事情があって放送できない。残念でならないが……。
この「ねっと99夢フォーラム」、講師陣は一流の方々で、半年先まで決定しているという。それが大網白里という場所で、しかも1000円で聴ける。申し込めば誰であろうと。
なぜ、こんなことが大網白里町で実現できたのか。そこには講師陣の心を動かす世話人の方々の想いがあるわけだが、興味のある方は「ねっと99夢フォーラム」に自身が参加して感じ取ってもらいたい。
  ㈱広域高速ネット二九六 放送事業部 斉藤絵美
参加者のアンケートより
1.今回の講演会についてのご意見・ご感想を
  ◎情熱を持つことの重要性を感じました。
   ありがとうございました。 (男性)
  ◎目的意識をもつことが重要であるとは、わかって
   いながらなかなかできない。
   あと一歩を踏み出す勇気が必要。  (男性)
  ◎経験談に基づいた実践的な話で
   大変参考になった。  (男性)
2.フォーラム運営についてのご意見・ご感想を
  ◎年会費制で参加費を徴収することも一案かと。
   また、毎回1,000円という参加費が妥当かどうか
   やや疑問。毎回の話をまとめて出版物として
   発行してみては。  (男性)
  ◎とても素晴らしい企画と思います。  (男性)
  ◎一流の講師を呼ぶ講演と懇談、OKです。 (男性)
  ◎いろんなジャンルの方の講演を期待します。
   参加者の方々の友達の輪が広がるとよいですね。
    (男性)
  ◎毎月、継続して下さい。  (男性)