実川 真由 氏

立教大学観光学部交流文化学科3年  2008.06.14

受けてみた世界一の教育
        フィンランドの授業
 OECD(経済協力開発機構)の国際学習到達度調査(PISA)では、2003年調査に続いてフィンランドが世界第1位に輝きました。
 この「森と湖とオーロラの国」、北欧・フィンランドの公立高校へ約1年間留学して、その体験記『受けてみた フィンランドの教育』(文藝春秋社)を上梓したのは、現在立教大学観光学部交流文化学科2年の実川真由氏です。
 同書には「英語は書かせることに始まり、書かせることに終わる」「『勉強する』ことは『読む』ことである」「プレゼンテーションから自分を表現することを学ぶ」「わかっていないまま、進級することのほうが恥である」「塾はない。しかし、授業中は徹底的に集中する」「年齢に制限のない社会が生む受験のない世界」など世界一の理由がふんだんに記されています。
 当日は、実川氏に、留学時に体験した合理的な授業や試験、教師の力量、クラスメートやホストファミリーとの交流などを解説いただくことにより、フィンランドの世界一の教育システムを識り、日本の教育の課題を探ってみたいと思います。

実川真由(じつかわ・まゆGitsukawa Mayu)氏の略歴

 1987年生まれ。
 私立立教女学院高校2年のときに、財団法人エイ・エフ・エス日本協会の派遣生として2004年8月から2005年6月までの約1年間、フィンランドの首都ヘルシンキにある公立のヘルトニエミ高校へ留学。
 現在、立教大学観光学部交流文化学科の3年。文化や観光の成り立ちについて学んでいる。
 2007年9月15日、母親の実川元子氏とともに上梓した『受けてみた フィンランドの教育』(文藝春秋社)は、OECDの世界各国15歳対象学習到達度調査の発表以来、注目度が増している。







講演レポート
受けてみた世界一の教育 フィンランドの授業
立教大学観光学部交流文化学科3年
実川 真由 氏
ご意見  【講師・参加者】
講師のコメント (実川真由)
楽しめた講演、盛り上がったディスカッション
立教大学観光学部交流文化学科3年 実川真由
「ねっと99夢フォーラム」では、様々な活動をなさっている方に毎回お話をしていただいてると伺っていたので、大勢の方の前で講演会をしたことのない私などが務まるのだろうかと、正直不安な気持ちで向かいました。
 到着すると、暖かい雰囲気のホールと、大きな机を参加者の方々が囲むように座っており、緊張はしていましたが、不安なく話すことができました。
 まとまりのない話でしたが、皆様が真剣にご静聴くださったおかげで最後は楽しむことさえできました。
 年齢、世代はもちろん、本当に幅広い職業の方々が同じようにテーブルを囲んで、ひとつのテーマに沿ってディスカッションをするという経験はもちろん初めてで、その中で出たご意見は全てが「そうか!」と納得させられるものでした。
 特に、高校生や学生の方が、自分よりひとまわり、ふたまわりもご年配の方に対して意見を述べられているのには、感動しました。
 今回は「教育」という、誰もが経験してきたテーマだったので、より自分のことにおきかえて考えることができたのかもしれません。
 最後、皆さまとゆっくりお話できる時間がもう少しあればよかったのですが、また次の機会にと思います。
 このような貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
「ねっと99夢フォーラム」、また九十九里地区・大網の益々の発展をお祈りしております。
講演会の感想
日本の「覚える」教育に一石を投じる
フィンランドの「理解する」教育
             高校教諭 宮郷和也
今回、実川真由さんのお話を聞いて最も印象に残ったのは、「フィンランドでは、先生も生徒も授業中に何も書かない」ということだった。これは驚きだった。日本の学校では、用語や語句を覚えることが重要である。生徒がノートをとらない、なんてことは考えられないからだ。
じゃあフィンランドの子どもたちは、どうやって学習するのか。それは、頭で覚えるのだ。話を聞いて頭で理解する。話の本質は記憶の中に残るものだ。忘れてしまうようなことを覚える教育が、果たしてどれだけ重要なのか?という逆転の発想を、フィンランドの教育は気づかせてくれる。
さらに驚いたのが、評価のやり方だ。試験はすべてエッセイ。1年間学習して頭に残っていることを文章化する。だから彼らはひたすら話を聞き、本を読んで理解する。日本の教育は「覚える」ことだが、フィンランドでは「理解する」ことなのだろう。
これは、教育に対する共通理解が、フィンランドの社会でなされているからだと察する。教育で身につける本質的なものは生きる知識、それは入試で役立つ近視眼的な知識なんかでは決してない、という考えが、国民に浸透しているのだろう。このことは、わが国の教育の在り方にも一石を投じると思う。
 ただいっぽうで、「日本のように用語を暗記することも重要である、とフィンランドの先生が言っていた」との元子氏(真由さんのお母さん)のお話にも一理あると思った。日本のやり方とフィンランドのやり方の融合。混迷するわが国の教育について、ひとつの重要な指針を与えてくれた今回の講演に、大変感謝している。
参加者のアンケートより