根本 良一 氏

矢祭町前町長  2008.09.13

真の自立をめざして
      ~小さな町の大きな挑戦~

 2001年、小さな町の「市町合併をしない宣言」は、全国に強い衝撃を与えました。行政改革断行の折、多くの市町村や住民が合併は不可避と思っていたからです。この「合併しない宣言」をリードしたのは、当時矢祭町長の根本良一氏です。
 氏の主張は「合併特例債は『毒アメ』で現代版『金色夜叉』だ」「昭和30年代の昭和の大合併の際、3地区が離反し、何人もの組長が自殺するという血の雨を見てきた」「相互に気心の通じた同じ環境、利害を持つ範囲内で構成し、強い連帯意識で団結するのであれば……」というものであり、宣言後の住民アンケートで
も、70%強が賛成の意思を示しました。
 この宣言は、首長や議員の保身のための反対ではなく、「身を切っても知らしむべし」との強い意思を込めて、議員、職員の半減などの行革となりました。町長自らも「オイラたちは大して働いていない」と議会に三役と教育長の給与引き下げを提案し、総務課長と同額に抑えました。嘱託職員も全廃し、トイレ掃除も
ゴミ出しもお茶くみも職員自ら行っています。
 現在、矢祭町は、爪に火をともすような自助努力、工場誘致やニュータウン、全国初の議員報酬の日当制などの結果、県内有数の町となりました。また、根本氏の「中山間地域を子孫に引き継ぐのは、私たち地域の守り部の責任」との意思が脈々と流れているようです。
 当日は、地方行政の“鏡”・根本氏のお話を聴いて、町づくりにいかしていきましょう。







講演レポート
真の自立をめざして ~小さな町の大きな挑戦~
矢祭町前町長
根本 良一 氏
ご意見  【講師・参加者】
講師のコメント (根本良一)
同志のところへ友遠方より来る
     矢祭町前町長 根本良一
 昨年4月、町長の任期を6期24年全うし暇だろうからといろいろな人が訪ねてこられるので前よりも忙しくなりました。
 今年4月に大里総合管理の封筒で土屋さんから講師のお誘いを受けました。いわば召集令状、赤紙です。
 封筒の中には依頼状とともに大里さんの会社案内がありました。
 私は判るんです。お誘いを受けた内容で。「友遠方より来る」で、私は同志のところには万難を排して行くことにしているのです。今日も高速で3~4時間かけて来ました。
 実際に来てみて、会場の社長さん、野老さんというんですね。ちょっと違うなと思いました。
 なぜ違うか。人を罰したり治めたりしないのが正しいという考え方だからです。(談)
講演会の感想
根本良一前矢祭町町長のお話を伺って
                                         学習院大学教授 馬淵昌也
 小生が日本で最も敬愛する先達である根本良一前矢祭町町長のご講演は、いつもの通り、地方自治の根幹に触れる感動的なものであった。まず、首長というものが、あくまで町民の暮らしを守るために存在するものであること、その原則に一貫して目線を据えて町長職を務めてこられたことが示された。そして、様々な場面で障害にぶつかっても、「町のため」ということを堅持して一歩も譲らず、わが道を貫いてこられたことが、いくつもの事例を通して、悲喜こもごもに語られた。
 お話を通じて改めて痛感したのは、優れた首長のリーダーシップの重要性ということである。地方自治のあるべき形を実現するためには、まず先見の明と無私公平な人格を備えたリーダーを戴かなくてはならない。また、それに呼応する役場職員、議会の自覚と取り組み、そして更には、住民の自発的参加と協働が不可欠だということが確認できた。
 禅の言葉で「?啄同時」という言葉がある。上からのモメントと、下からのモメント、それが交錯するところにこそ、新たな明日が開けるのである。地方自治においても、まさにその原理が貫徹していることを納得するとともに、自分自身も住民としての覚悟を固めなければならないと身が引き締まる思いであった。
参加者のアンケートより